土谷未央 インタビュー

土谷未央 インタビュー

手仕事と機械工業の間


ーものを選ぶ基準を教えてください

キッチン周りなどの道具は、使いやすい、洗いやすい、管理しやすいものといったように、実用性をメインに、なおかつデザインが美しいものを選びます。
道具ではなくて、用途を持たないオブジェクトなどは、オリジナルを感じるもの、面白いもの、コンセプトが立っているものに惹かれます。手作りの1点ものが好きなのですが、手跡が残りすぎているものが苦手で、手作りではあるけれど、手作りと工業製品の中間のような表現が好きです。


ーものを選ぶ基準は昔と変わってきましたか?

手作りと工業製品の中間にあるようなものが好きというのは変わっていません。ただ、実用性を求める道具などは、これまでたくさん買い物の失敗を繰り返してきたこともあって、長く使えるものを選べるようになりました。


ーものの情報源はどこからですか?

昔から雑誌は読まないしテレビも見ないので、流行などの情報には疎いです。
ただ、好きなお店やオンラインショップがいくつかあるので、たまに覗いて、新しいものを見つけると、そのメーカーを調べて、そこからまた別のものを見つけたり、というように一つの商品からいろいろと掘り下げていきます。あとは、ホームセンターに行ったり、業務用のものを買うことが多いのですが、そこから日用品や制作で使えるものを見つけることもあります。


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ー最近、何か買い物をされましたか?

3ヶ月ほど前に子供が産まれて、最近購入したものは赤ちゃんのものばかりですね。
キッチン周りだと、布巾掛けとか、お玉置きとか、なくても困らないけどあったら便利なものを最近いくつか買いました。
あとは、籠ですね。籠が好きで、家には籠がたくさんあります。


ー籠を選ぶ時のポイントは?

先に何を入れるか用途を考えることが多いです。例えば重さがあるものだったら、竹で細かく編まれたものでないとダメだなとか、タオルなど柔らかいものを入れるのであれば、ウォーターヒヤシンスとかカチューなどの素材で編まれているものにしたり。アケビでできたものだと匂いがあるから、匂いが移りやすいものは入れられないなとか。用途と必要なサイズを満たした上で、見た目にも格好良い籠を購入します。








ーものの対価は気にしますか?

日用品などの道具に関しては、値段設定に限界があるので、常識外れの価格がついているものは少ないと思うんです。でも、例えば作家が作った器や、やかん、鍋など、用途があっても桁外れに高価なものに関しては、目的と価格のズレを感じてしまうので、あまり好きではありません。
用途を持たないオブジェクトに対しては、そこまで値段はシビアに考えないです。みた瞬間に衝撃を受けたり、すごくいいものだと思えば、値段はあまり考えずに購入します。そういうオブジェクトの値段は、作家の意図を持ってつけられることに意味があると思うので、10万でも、100万でも、納得できます。日用品とオブジェクトは、無意識下で分けて、その上でものの対価を考えていると思います。


ー断捨離されますか?

断捨離は年に何回かします。鍋やボウルやスプーンなど、特にキッチン周りのものは買い重ねてしまうんです。収納にも限界があるので、引き出しに納まらなくなったときに、思い切って売ったり人に譲ったりします。なるべくものを捨てないように、そういうことを細々とやって、一つ買ったら一つ減らすように心がけています。






ーコレクションしてるものはありますか?

映画のDVDが700本くらいあります。映画が好きでよくみるのですが、好きな映画は繰り返しみます。停止しないと見逃してしまうシーンや美術をじっくりと確かめたりしたいということもあって、気に入った映画は必ずDVDを購入します。配信でも見るのですが、配信映画を購入することはほとんどなくて、DVDというものとして持つことが好きです。
あとは、箱とか籠とか瓶とか器とか。どうも何かを入れられる形に惹かれるらしいんです。そういったものは無意識のうちに買って、集まっています。


ーここ最近でヒットした買い物を教えてください

業務用のシーラー。食べかけのものなどを入れるのにジップロックを使うたび、この袋を捨てるのはもったいないとずっと思っていて。それで、家のキッチンにもシーラーを導入したんです。そうしたら、ゴミも減って、食べかけのポテトチップスや煎餅もパリパリに美味しく保存できて、感動しました。製菓の仕事ではいつも当たり前に使っているものなのですが、家庭にもあると良いものでした。






ー土谷さんを構成する3つのアイテムを教えてください

DVD、箱。
それとゴムベラかな。工房でも家のキッチンでもどちらでもガシガシ使っていて、本当に頼りになる存在です。


ー土谷さんにとっていいものとは何ですか?

例えばスリッパなどの日常雑貨に対していいなと思うのは、主張しないもの。形がいいなと思ってもオモテの目立つところにロゴがあるものは手に取りません。「そのブランドのものを身につけている自分」になってしまうのが嫌なんです。みんながいいと思っているからそれはいいものなんだとは思わないタイプで、自分の感覚を大切にしています。私はこの形が好きとか、色が好きとか、コンセプトが好きとか、そういう物自体の良さに惹かれるので、誰が作ったかというキャプションは後からついてくることなんです。なので、ブランド名を見せなくてもものの良さが際立つものが、私にとってのいいものです。






ーどうしてセレクターのオファーを受けていただけたのでしょうか?

自分の欲望にのみ従って選択したものについて、改めて、客観的に考えてみたいと思ったからです。どんな人に使って欲しいかとか、こんなシーンで使われて欲しいとか、届く先の景色を想像する機会をいただきました。


ー人によるキュレーションというコンセプトについて、どう思われますか?

セレクターの方の生活の一部みたいなものが少し垣間見られて、面白いなと思います。






ーHATCHでのアイテムセレクトのコンセプトを教えてください

全体の統一感を意識して選びました。同じ空間にあっても、合わなくないもの。お皿とフックが同じ場所にあっても喧嘩しないというか、もの同士の世界があまり離れないように選びました。それから、どれも自分が好きで気に入っているものです。


ーHATCHのお客様へ一言

お買い物を楽しんでください。


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