村田明子 インタビュー

村田明子 インタビュー

緊張感と癒しを同時に感じられるもの

アントワープ王立芸術アカデミーのファッション科に通っていました。学校というよりかは、街に感化されるところがあって。芸術色が強いとこだったので、そういう意味で学校外で出会う、アートディーラや建築家、アーティスト等に色々と教えてもらったりしていました。 卒業後、ヴィンテージの洋服のディーリングや、スタイリストをしていた時に、Santa Maria Novellaのアントワープ支店を運営していた友人から、 その建物の2階にタオルやパジャマなどの生活雑貨を販売するお店をやるのに誘われたのがきっかけで、ブランドをその友人と立ち上げました。その後、一人で今のMA deshabilleというホームウェアブランドを立ち上げました。 Santa Maria Novellaの身体に浸透していくような癒しの世界観に感化されて、ビジュアルというよりはフィーリング、心地よいとか気持ち良いとかに興味が出て、ビジュアルはもういっかなと。ビジュアルじゃないファッションをやりたいなと、はじめたのがきっかけですね。HATCHでは、緊張感と癒しを同時に感じられるアイテムをセレクトしていきます。



消費じゃなくて浪費

ブランドをやっていますが、一消費者として、やっぱり服が好きでプロになりきれない自分がいます。ビジネスとして考えると、これが市場に受けるとか、このボタンをつけたら値段が高くなってしまうとか、考えざるを得ないのですが、そういう風なものづくりをするとどうしても納得いかないものになってしまいます 。市場にあふれている服が薄まったものに見えるんです。 消費じゃなくて浪費をしてもらいたいなって。個人的な自己満足を充実させる本気の贅沢みたいなものを作りたいと思った時に、マジョリティーに向けてではなく、マイノリティー向けの嗜好品みたいなものを作りたくて。そういう意味で掘り下げると、食と同じで素材が大切。消費というより浪費なんです。作り手の経営に都合のいい洋服ではなくて、一度袖を通したいとある一定数のお客様が欲望するもの。そういうものを世の中に広めていきたい。



時に耐えられるもの

自分を邪魔しないものが好きですね。例えば、北欧の椅子や机って、カーブがうまくできていてフィットする感じがあったり。コーヒーカップを口に当てた時にしっくりくるとか。自分に違和感がないもの、なじんでくるもの、自分に溶け込んでいくようなものが好きです。 私にとってのもの価値は、10年経った時に値段が変わらないか。時の経過に耐えられるものかどうか。10,20,100年耐えられるか、そんなものが好きです。ここの場所、Siebenは展示会等々でよく使用させて頂くのですが、100年前のものがざらにおいてある。こういう家具と一緒において耐えられる様なルームウェアでないと、欧米の人は買わないと思うので、ものつくりの上でも随時そう云うことは為す様にしています。 でも、サウナに置いてあるような、最初から歯磨き粉がついている歯ブラシはそれはそれで好きだったり。(笑)



緊張感と癒し

ものを選ぶ尺度は人の経験だと思います。HATCHではそういう経験を教えてもらえて、いろんな発見ができるところなんだと思います。どのセレクターさんも、いろんな経験をして失敗もたくさんして、最終的に今のセレクトに行き着いているとおもうので、そこをスカッと見られるのが素敵ですね。 緊張感と癒しというのは矛盾することだけど、それが二つあるものが好きです。今回HATCHではそんなセレクトをしました。レターセットは紙質が極上なので余白をきれいに字を書こうと思える。書くときにいい意味で緊張する。シーウォーターはセットしていないようで、ちゃんとセットされている無造作ヘアを簡単に作れる。bodcoは楽なんだけどすごく贅沢で背筋が伸びる。そんなバランスのもの。 自分がセレクトしているものは、~にしては高いな、と感じられるものかもしれません。でも、ものが自分を育ててくれるということを自分も経験してきました。 今の私が行き着いたセレクトで、そのもののよさをシェアできば嬉しいです。


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