座右の銘は「ギンギラギンにさりげなく」
家業は京都でアーリーアメリカン調の家具をメインにしたインテリアショップを営んでいました。アメリカが大好きな父親は僕の名前を譲滋(ジョージ)と名付けました。その家業の影響もあって、大阪の芸大でインテリアデザインを学びながら、大学4年間ずっとソニープラザ(現プラザ)でアルバイトをしていました。当時のソニープラザはアメリカ文化の香りがプンプンするような雑貨を多く扱っていて、そういった雑貨と外国の文化に触れた事が現在の仕事のきっかけになっていると思います。卒業や就職を考えはじめた時に、「自分で商売をしたい」と思い、卒業前の大学4年に生活雑貨と家具を取り扱うお店「GEORGE’S FURNITURE」を京都で創業しました。今の「GEORGE’S」の前身となるお店です。当時はインターネットもSNSもない時代だったので、集客は全て口コミ。お客様も徐々に増えていき、駐車場が足りなくなって、少しづつ大きな店舗に移転していきました。実は後にビジネスパートナーになった横川さん(横川正紀氏:株式会社ウェルカム代表)とは最初の京都のお店の上の学生マンションに住んでいて、共通の友人に紹介してもらい、そこから仲良くなって、全国展開をふたりでやっていきました。創業して30年以上経ち、名前も「GEORGE’S」に変えて、現在も20店舗のお店が全国にあります。
それからは、ライフスタイルショップ「CIBONE」、国立新美術館の「スーベニアフロムトーキョー」、「DEAN & DELUCA」などを横川さんと一緒に手がけてきました。
現在は、株式会社ジョージクリエイティブカンパニーの代表をやっています。デザインを切り口にいろんなビジネスのコンサルティングや企画提案をしていく会社です。ただおしゃれなものやカッコいいだけでなく、デザインによってリアルに売上や利益を上げて、ちゃんとビジネスとして成り立たないと意味がないと思うので、僕自身も「デザインビジネスプロデューサー」という肩書きを名乗っています。
「スーパーお客様目線」を忘れない
CIBONEでは、200円のボールペンから200万円のテーブルまで取り扱っていました。高価なものもありますが、それだけではなく、必ず買いたくなるようなものがあるんです。リアルなライフスタイルだけど、少し憧れがあるようなものを提案していきました。よく使う言葉なのですが、”今の半歩先”の提案です。一歩、二歩先だとお客様に分かりづらい。でも、半歩先だったらなんとなく分かるかなぁという感覚です。お客様やマーケットから離れすぎているものは提案しない。CIBONEでは自分の生活の中に取り入れると少し普段の生活が少し豊かにハッピーになる商品を世界中から集めました。
何かを手がける時はいつも、自分だったら本当にこれを買うのか、自分が本当にこのお店に行きたいと思うのか、を徹底的に妄想します。お客様の立場になった”スーパーお客様目線”を大事にしています。
仕事を通してなにか世の中に伝えていきたいというような、大それたことはあんまり考えていなくて、自分が行きたいと思う店を作りたいし、自分が買いたいと思う商品を作りたい。今回のHATCHのセレクトも自分が使っているものや欲しいものばかりです。
共感して買う
僕が創業した1980年代頃は、ライフスタイルショップ自体が新しい業態で、ランチョンマットって何?という時代でした。ランチョンマットを買うとしても1枚だけ。それを昔、食卓の中央にあったミカンの籠の下に敷く、固定電話の下に敷く、みたいな時代でした。それを、ひとり1枚、食事をするときに敷いて、こういう風に使っていくんですよ、という提案から始まりました。今やものや情報が溢れかえる時代になって、新しいライフスタイル提案が難しくなってきました。
一方でお客様の購買動機も変化していました。例えば、旅行に行った時って何かついつい買ってしまうじゃないですか。アミューズメントパークに行けば、ウキウキでキャラクターのハデなハットを買ってしまったり。それって体験や思い出が購入意欲に変わるんだと思うんです。ECではできない体験こそがリアル店舗の良さだと思っています。
その点、HATCHは、その商品を選んだセレクターの想いがあって、それがちゃんと説明されていて、そこに共感した方が購入していく。すごくいいサービスだなぁと思います。
今の自分のマインドに合うものを買う
どこで買い物をするというのは決まっていなくて、100均ショップも行くし、アンティークショップで買うときもあるし、ECも使うし、その時の自分のマインドでものを選んでいますね。学生時代はアメリカものが好きだったのですが、今はヨーロッパのものもいいし、日本の民藝工藝ものも大好きです。
今の自分のマインドに合うようなものを選んでいて、自分の惹かれたポイントがデザインであれば、それはデザイン重視で選んだことになるし、ガジェットなどはこの機能すごいなぁって思って買います。小学生の時の通信簿に、「落ち着きがなく注意散漫」っていつも書かれていたのですが、今でもそうですね(笑)
こういうデザインが好きっていうものがあるわけではなく、なんか自分の嗜好も散漫な感じです。本当に欲しいなと思ったら高くても買うし、安いから駄目ってこともない。関西人だからか、安くていいものを見つけた時は勲章のように思えたりします。(笑)今の自分にとっていいかどうか、それが僕にとって「いいもの」の価値ですね。今の自分のライフスタイルと今の自分の状態にベストなものがやっぱり「いいもの」なんじゃないかな。
本質的にものを選ぶ
今回で3回目なのですが、「匿名希望展」というアートのチャリティーイベントを開催させていただいています。有名無名問わず、有名アーティスト、タレントから学生、子供など、幅広い方々に同じテーマで作品を描いてもらって。それを作者匿名でオークション販売して、手元に届いた時に初めて誰の作品か知ることができる、という仕組みです。アートをもっと本質的に選んでほしいという想いから匿名にしているんです。有名なアーティストが描いたとか、誰が高額で買ったとか、そういった情報に惑わされないで、ものを買うというのは現代社会で意外と貴重な体験かもしれません。
共感が伝わっていく
HATCHは、今回のセレクターのお声がけいただく以前から、買い物をしたこともあって、元々好きなサイトです。錚々たるセレクターの中に参加させていただけることは大変光栄だと思っています。
今回のセレクトは、小学校の通信簿でいつも書かれていた「落ち着きがなく注意散漫」が現れているような、いろんな場面の自分を表現した一気通貫していないものたちです。僕が、これいいでしょ、美味しいでしょ、いいと思わない?というものに、共感してもらってさらに広がっていけば嬉しいですね。
僕のセレクトした商品を購入していただけたら、是非感想を教えてほしいですね。ジョージさん、いや、もっといいものありますよ、とか。
友人とご飯を食べてて、あれいいよねって話して、人づてに情報が広がっていくのが好きで、人を介してものが伝わっていくHATCHは素敵だなぁって思います。この人が選んでいるっていう人の顔が見えるし、そこにはものへの想いがある。自分の共感が、別の人の共感として広がっていったら嬉しいなぁと思います。