車田篤 インタビュー

車田篤 インタビュー

長く愛着を持って使えるもの

「THE GREAT BURGER」というハンバーガー屋を核に「GOOD TOWN BAKEHOUSE」「THE GREAT BURGER STAND」「The Little BAKERY Tokyo」といったアメリカン業態の飲食店のほか、和食業態の「THE TEISYOKU SHOP」を経営しています。また、プロデュースという形で、他社さんの飲食店のサポートも全国各地でやらせていただいています。
小学校低学年の頃に、E.T.やバック・トゥ・ザ・フューチャー、スタンド・バイ・ミーなどを見て、漠然とアメリカってかっこいいなって思ったのがきっかけで、アメリカを好きになりました。初めてアメリカ本土に行ったのは20歳。その時は、とにかく全てがすごい!っていう感じで。今考えると、本当に一部しか見ていなかったし、よく分からないまま帰国したと思うのですが、当時はもう空港着いた時点で圧倒されて。右車線に車が走っているだけでワクワクするというか、ちょっとしたこと全てに感動しましたね。

母親が料理が好きで、毎日の食事からおやつも洋菓子に和菓子と全て手作りだったんですよ。ほとんど外食をすることもなかったですし、外で買ってきたケーキやパンなどは食べたことがなくて、口に入るほとんどのものは母親が手作りをしてくれました。それと小学生の頃に、母親が手作りのケーキとコーヒーを出すような小さな喫茶店を始めたんです。そういう姿を見ていたこともあり、料理を作ることに対しては当たり前の認識でしたね。
初めて飲食店で働いたのは大学生のときのラーメン屋でのアルバイトです。飲食業界で働いていくぞ、という感じではなく、まかないが出てご飯を食べられるからっていうくらいの理由で。そこから、飲食を目指すという理由ではないのですが、地元の愛知県から上京することになり、その時代はカフェブーム、裏原ブームの真っ只中だったんです。カフェに行くと、雑誌とかテレビで見るような人たちがお客さんとして普通にいて、すごいなぁって。カルチャー込みの飲食店というのが盛り上がっていった時に、すごい魅力を感じたんです。元々料理好きだし、インテリアも好きだったので、そういう自分の好きなことを表現できるのって、こういうことなんだっていうところから、飲食店への想いが一気に加速していきました。



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美味しいもの+人との繋がり

チェーン展開しないの?と言われることがあるのですが、同じことはやりたくない、というか飽きちゃうんですよね。今あるものを続けることは全然苦ではないのですが、新規のお店をオープンさせるのなら、今とは違う新しいことをやりたいなって思ってしまう。今あるお店をもう1つ作ることより、新しいことをやりたいなっていうモチベーションの方が強いんです。世の中の仕組み上、売上を確保してスタッフにしっかりと給料を渡して、会社を維持していかないといけないし、それはもちろん責任としてやっていくのですが。お金を得るためっていうモチベーションがあまりないので。結果ついてくればよくて、自分の想いを表現して、それでお客様に喜んでいただけるということが、自分の一番の幸せです。

僕は、美味しいもの+カルチャー込みでやっているつもりで。こんな美味しいものがあるんだよ、とか、こういう食べ方があるんだよというのは、言葉や文字にはしていないけど、やっていることを通して表現していきたいなって思っています。それと、飲食店というのは、人が集う場所じゃないですか。流れていかないというか、ある一定の時間をそこで過ごすので、いろんな出会いがあったり、人が繋がっていくきっかけの場所になったら嬉しいですね。美味しいとか雰囲気がいいっていうのは当然のことで、そこで人が出会って繋がってくれたらいいなって思います。
自動販売機や、コンビニとかはなくなればいいのにって思うんですよ。もちろん便利ですし、僕もよく使っていますよ。
例えば、自動販売機のお茶も、電子マネーですぐ購入できて、そこにはお茶を買う以外には何にもないじゃないですか。コーヒーを飲みたいなと思ったら、コンビニでも、自動販売機でもすぐに購入できてしまう。
最近ではコーヒースタンドも多くなってきましたが、もしコンビニや自動販売機がなかったら、朝コンビニに寄ってから会社に行くのではなくて、近くのカフェやコーヒースタンドといったように、みんな自分の行きつけのお店ができる。そこに毎日同じ時間に来る人がいて、「あっどうも」って人が出会って繋がっていく。そうすると、意外な人たちが繋りだして、そこでまた違う新しいカルチャーが生まれていくと思うんです。その点、日本はものすごく機会損失しているなって。
飲食店は、美味しいや居心地の良さは当たり前で、プラス、人との繋がりのきっかけを提供するという機能もあるのでは、ということを、表現して伝えていきたいです。



古くて普遍性のあるもの

普段ものを選ぶ基準は、長く愛着を持って使えるかどうか。洋服は古着だったり、家具や雑貨、食器などはヴィンテージやアンティークのものだったり、古くて普遍性のあるものに魅力を感じます。流行やトレンドはあまり興味ないですね。
大量生産で簡素化されているもので溢れていますが、古いものって、ちょっとしたディテールに凝っていたり、今にはない質感や素材感とか、年月が経っても魅力が落ちないんです。それと、当時はたくさん作られたものでも、今ではあまり出回っていないものなどは、その希少性にも魅力を感じます。古いものって、不便だったりもするんですけどね。バランスだとは思うのですが、アナログで少し使いづらいくらいがちょうどいいんですよ。使っていくうちにその魅力にとりつかれていくというか。

何かを買うときは、その場の出会いを大切にします。コロナ禍で今は海外にはなかなか行けないのですが、アメリカに店舗があるということもあり、2ヶ月に1回以上のペースでアメリカに行って、アンティークショップやフリマなどに足を運んでいました。そこで自分の好きなものにパッと出会うことが多いですね。一生懸命探すというよりは、その時の出会いですね。
ものすごく高価なものを除いて、何か欲しいと思った時は値段は見ません。欲しいと思ったら買う。高いからやめようとか、安いから買おうというのではなく、本当に自分が欲しいか欲しくないか、という基準。



捨てるぐらいだったら買わない

収集癖はある方かな。収集癖というか、気に入ったものであれば、これはもう二度と買えないかもと思って、同じものを二つ買っちゃいます。必要以上に家にあるなと思うのは、100足以上あるコンバースと椅子とですね。家具やインテリアも好きなので。それと、アートはもう壁に飾れないくらいあります。価値のある現代アートというものではないのですが、いいなと思うものは買ってしまいますね。今、すごく欲しいなと思っているものは、デロリアン。バック・トゥ・ザ・フューチャーの。国内に2台ぐらい中古車があるんですよ。すっごい欲しいなって。

断捨離はしないですね。断捨離すること自体はいいことだと思います。でも、捨てるぐらいだったら買わない。そこは買うときに愛着を持って長く使えるものを選ぶ。
長い目で見ると、SDGsや環境問題にも繋がるのかな。それを意識してというわけではないのですが、結果的にそうなるんだろうっなって。代々使えるものなんかは、それを受け継いでいく楽しみもあるだろうし。
ものによる豊かさは、自分にとっての満足度だと思うんです。それが例えば、高級なものを手にして満足する人もいるだろうし、僕の場合は長く愛着を持って使えるものを手にしたときに幸せだなって思います。



大切に愛着を持って使えるものと出会えてもらえたら

HATCHを初めて知った時はすごくいいサービスだなと思いました。自分が興味のある人や、憧れている人がセレクトしたものをそのまま買える場所というのは面白いですね。
買わなくても、この人はこういうものが好きなんだっていうのも分かるし。ただ商品を購入するだけではなくて、そのもののストーリーが語られているのが、愛着の湧くきっかけになるなって思うんです。
友人ですら、普段どんなものを気に入って使っているのかって、一部しか見えないじゃないですか。そういったものが、見えてくるのは面白いし、しかもそれをそのまま買えるっていうのがいいなって。セレクターに声をかけていただいた時は、僕でいいんですか?っていう気持ちもあったのですが、嬉しかったですね。
今回のHATCHでのセレクトは、自分が本当に気に入って使っているものというのがまずあって。それと、仕事柄、料理というのはついてくることなので、食に関係のあるものをセレクトしました。
大切に愛着を持って使えるものと出会えてもらえたらいいなって思います。



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