幅允孝インタビュー

幅允孝インタビュー

面白い本との出会い

「読んでおくといいのではないかな」と僕が思った本を提案します。よのなかは検索型です。知っている作家や、興味ある分野の本しか人は手にとりません。ただ、アイデアの根っこや、自分にとっての新発見というのは、案外むこうの方から吹いてくるのではないかと僕は考えています。日本だけで年間7万タイトルもの本が出版されているなか、なにが正しい本なのかのジャッジは誰にもできません。けれど、僕なりの嗅覚でずっと読み続けられるような、経年変化に耐えうる本の上澄みを紹介しようと思っています。まあ、手に取ってみて、アクビが出たら「ごめんなさい」としかいえませんが、きっとあなたの興味を「待っていてくれる」遅効の本を、考えを巡らせて選ぶつもりです。



本との一期一会

子どものころから本がすごく好きでした。親の影響もあったんだと思います。本代はお小遣いとは別で、本だけはいくらでも買ってもらえるとか。社会人になり、最初は書店に勤めていましたがあまり人が本屋にきてくれなくなってしまったので、人がいる場所に本をもっていこうと思いました。現在は、いろいろな本屋や、本屋じゃないところなどに本棚をつくる仕事をしています。六本木ヒルズ「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」、国立新美術館「スーベニアフロムトウキョウ」、新宿伊勢丹「ビューティーアポセカリー」など、本の様々なプロジェクトに関わってきました。僕がやりたいのは、「本を手に取る機会を世の中にたくさん点在させたい」ということです。今回はHATCHというWEB上で、知らない本と偶然出くわしてもらえると嬉しいです。



本は待っていてくれる

本を買って失敗したくない。もしくは、「泣ける」とか「ワクワクする!」など、一時的な感情をジェットコースターで味わうようにトレースすることのみを目的に本を読む。誰もそれを責めることはできませんが、それこそが売上げランキングの上位本ばかりが売れる理由です。僕が考える本というメディアの特性は、もう少しゆっくりとジワジワ効いてくる遅効の道具。いつひらくとも知れぬ抽き出しに、自分だけの大切な1冊がしっかり入っていることが、本に踊らされない付き合い方だと思っています。送られてきた本が瞬間的に「失敗!」だと思えても、ゆっくりじっくり読み進めてみてください。多分、たくさん読むことが重要なのではなく、しっかりと血肉化して読むことが大切なのです。


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