加賀美健 インタビュー

加賀美健 インタビュー

絵は上手いけど面白くない

中学までは野球少年でした。ボウズで、活発。ワンパクなんだけど、悪いことはしない。かといって、優等生というわけでもなく、たまに親に迷惑をかける。勉強もできない普通の子という感じでした。 小さい頃からものを作ることは好きでした。今でもそうですけど、全然上手ではなかった。 図工の授業の時に、上手い人の作品が貼り出されるじゃないですか。それを見て、上手いだけじゃんって思っていました。絵は上手いけど面白くないなって。いまだにその感覚はあります。すごく上手くて面白い方ももちろんいるけど、上手いだけがいいって感じは何だよって、小学生の頃からずっと思っていますね。だからといって、下手に描いているとかではなくて、本当に描けないので。そのコンプレックスがあるからいいと思うんですよね。他とは違うやり方でやらないとそもそも勝てないんです。


ターニングポイントはサンフランシスコ

19歳から25歳まではスタイリストの馬場圭介さんのアシスタントをしていました。昔から洋服は好きだったのですが、きっかけは中学生の時に見た、W浅野主演の「抱きしめたい!」というドラマ。浅野温子さんがスタイリスト役だったのですが、なんなのこの仕事はって衝撃を受けて。すごいマンションに住んで、毎日撮影して、華やかで。それからスタイリストという仕事を調べるようになって興味を持つようになり、高校に入る頃には服飾に行きたいなと思うようになっていました。そろそろアシスタント卒業かなって考えていた時に、以前旅行で行ったサンフランシスコが、住んでる人とか、売っているものが面白くていいなっていうのがあって、実際にサンフランシスコに住もうかなって思ったんです。それで、アシスタントをやめた年から2年間サンフランシスコに住んだんです。その時がターニングポイントですね。アートの道に行こうと。アシスタントをやめてから、サンフランシスコに行って、帰国して、今までの長い年月があっという間だったんです。説明しろと言われてもできない。いまだに何をやっているのか自分でもわからない。性格上色々なことをやりたいから、これですって仕事ではないじゃないですか。死ぬまでわかんない。何をやってるんだろうって、何か消化できないような。その方がいいかなって思うんです。見てる側からしても。



どれも家には置きたくない(笑)

ストレンジストアは36歳からはじめて、来年で10年になります。きっかけは、高円寺にあった4畳くらいの狭い古着屋があって、セレクトがよくて、通っていたんです。お店の方と色々話していたら、自分も狭くてもお店とかやったら面白いなって。儲けるぞって感じではなくて、ただ漠然と、自分のお店をもったら面白いかなって。お店に置いてるものは流行り廃りは置いておいて、自分のアンテナに引っかかったもの。普通お店ってお客さんと共有したりするものですよね。買い付けてきて、この商品いいでしょって。そういうものは全く度外視して、自分が今気になるもの、面白いと思うものをセレクトしています。どれも家には置きたくないもの(笑)。こんなの嫌ですよ、家に置いてあったら(笑)。


自分が面白いと思うものを表現しているだけ

インスピレーションは、世の中のニュースや出来事だったり、それがあんまりアートとかの話題ではなくて、社会的な話題や友達間のパーソナルな話題だったり。そういうものから受けることが多いです。結果的に、出来上がった作品は、コメディだったりジョークなテイストだけど、実はそういうとこから得ていたりするんです。最後の落とし方がジョークなだけで。作品や仕事を通して、世の中にこんなこと伝えていきたいってことは特にないんです(笑)。自分が面白いと思うものを表現しているだけ。作家は語らない方がいいと思うんです。作っている時点で説明はしているつもり。



面白いってなにか

僕にとっての面白いってなんなんだろ。よく聞かれるんです。何でこれいいと思うの、何でこれ集めてるのとか。でもそれって説明できて集められるものではないと思うんです。分かんないから集められるっていう。 お笑いの番組見て、あれは面白いけど、あれは面白くないって、人によって違うのと同じじゃないかな。あの女の子は自分は可愛いと思うけど、人が見たらそうでもないとか。感覚的には人それぞれ違うから。自分の頭にビッときたもの全てが、僕にとっては面白い。


自分がいいと思ったもの

普段使うものの基準は特にこれといってないんです。お店や作業場にはものがたくさんありますが、実は住むとろこには極力ものがない方がいい。自宅のリビングもほとんどものがなくて、でも目に入るものは変なものは嫌なので、かといって、高級なものではなくて、普通のものですかね。なんか当たり障りのないもの。機能性は使いづらくなければいい。シンプルなものが好きですね。これは昔から変わっていません。アートって価値がないようなものなんだけど、高い作品はすごく高い。人が価値を決めていく。高く売れた絵だってなれば、一気に価値が上がる。興味ない人にはそれも価値がない。 だから、あんまりそういうものの見方をしないように心がけていますね。そうした方がやりやすい。どうしても情報が入ってきてしまうので難しいのですが、そういうのにとらわれると見方が偏ってしまうかなというのがあるので。自分の中では、自分がいいと思ったものがいいと思う。そういうものなら値段が高くても安くても価値があるものだと思う。



生活する上で必要不可欠なもの

最初にHATCHを知った時は面白いサービスだなと思いましたね。やってそうなんだけど他ではやっていないサービスコンセプト。今回セレクトしたものはどれも実際に使っているものです。リビングにかかっている壁時計や、普段着ている洋服、絵を描くときのペン。生活する上で必要不可欠なものたちです。当たり障りのないもの選んだんですよね。普段使うものは結局当たり障りのないものが好きなので。だから、僕が選んだものは家にあっても気にならないし、使いやすしい、ダサいとも言われないし。だけど置いていたら、あのヤカンいいねとか、あの時計いいね、とか。ちょっとわかる人にはわかるっていうのが伝わったらいいですかね。


加賀美健が選ぶアイテム一覧を見る >